事業承継ブログ

堅実なM&Aを進めるためのセカンドオピニオン活用の薦め
2026.06.13

M&Aは、もう「特別なこと」ではなくなりました
かつてM&Aは、大企業同士が行う特殊な取引というイメージが強いものでした。しかし近年では、中小企業の事業承継の選択肢として、M&Aは非常に身近なものになっています。後継者不在に悩む経営者が、第三者に会社や事業を譲り渡す。あるいは、成長を加速させるために他社の事業を譲り受ける。こうした「法人・事業の売買」は、もはや珍しいことではなく、地域の中小企業にとっても現実的な選択肢の一つとなっています。

しかし、「進め方」を知っている経営者は、ほとんどいません
M&Aという言葉自体は広く知られるようになりましたが、実際に「どのように進めればよいのか」を理解している経営者は、決して多くありません。
・譲渡価格はどのように決まるのか
・提示された条件は、自社にとって本当に妥当なのか
・契約書のどの部分に注意すべきか
・仲介業者から提案された相手企業は、本当に最適な相手なのか

こうした疑問を持ちながらも、「専門家に任せておけば大丈夫だろう」という気持ちで、話を進めてしまう経営者が少なくないのが実情です。M&Aは一生に一度、あるいは経営者人生をかけた一度きりの大きな決断です。にもかかわらず、判断の多くを「相手方の提案」や「仲介業者の説明」に依存せざるを得ない、という構造的な課題があります。

仲介業者・FA業者の多くは「成功してもらわないと困る」立場にある
M&Aを後押ししてくれる仲介業者やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)業者は、大切なパートナーです。専門的なノウハウやネットワークを持ち、譲渡・譲受の実務を進めるうえで欠かせない存在であることは間違いありません。
ただし、ここで一つ、知っておいていただきたい構造があります。多くの仲介業者・FA業者は、レーマン方式などの成果報酬型の料金体系を採用しています。つまり、契約が成立しなければ、主な報酬が発生しないという仕組みです。
この仕組み自体が悪いわけではありません。しかし、この構造の下では、業者は「契約をまとめること」に強いインセンティブを持つことになります。その結果として、
・交渉のスピードが優先され、十分な検討時間が確保されにくい
・譲渡側にとって不利な条件であっても、「相場の範囲内」として押し切られやすい
・不明確な点、リスクのある点があっても、「些細なこと」として軽視されがちになる
といった傾向が、どうしても生まれやすくなります。これは業者の善意・誠意とは別の、料金体系そのものに起因する構造的な傾向です。

M&Aには「アクセル」を踏む人はいても、「ブレーキ」を踏む人がいない
ここで改めて、M&Aに関わる関係者の立場を整理してみましょう。
・仲介業者・FA業者:契約成立に向けて、案件を前に進める
・相手企業(買い手・売り手):自社にとって有利な条件で交渉をまとめたい
・士業(税理士・弁護士等):自分の専門分野については助言するが、ディール全体の進め方には踏み込まないことが多い
つまり、M&Aのプロセスにおいては、「前に進める」ことを後押しする人は何人もいる一方で、事業者自身の立場に立って、
・「ここは一度立ち止まって考えましょう」とブレーキを踏む
・「この条件は、もう少し交渉の余地があるのでは」とハンドルを切る
という役割を担う人が、構造的に存在しにくい
のです。

だからこそ、「セカンドオピニオン」を置く意味があります
医療の世界で「セカンドオピニオン」という考え方が広く受け入れられているのと同じように、M&Aにおいても、ディールの進行そのものから一歩離れた立場の専門家に、進め方や事業評価について意見を求めることには、大きな意味があります

セカンドオピニオンとして関わる専門家は
・ディールが成立するかどうかによって、報酬が変わらない
・仲介業者・相手企業のいずれとも、利害関係を持たない
・経営者の「本当にこれでいいのか」という不安に、率直に向き合える
という立場にあることが重要
です。
具体的には、ディール成立にインセンティブを持たない契約形態(例えば、固定額のスポット相談やアドバイザリー契約など)を予め取り決めたうえで、その範囲内で、
・提示された条件・価格の妥当性についての意見
・契約書・スキームの確認、リスクの洗い出し
・「今、契約すべきかどうか」という、最も重要な判断そのものへの助言
といった支援を行います

このご支援方法は当事務所ても増加しています

まとめ
M&Aは、経営者にとって大きな決断であり、また一度契約を締結すれば、後から「やり直す」ことはできません。仲介業者やFA業者との連携は大切にしながらも、それとは別に、事業者自身の目線に立って、ブレーキを踏み、ハンドルを切ることができる専門家を、セカンドオピニオンとして確保しておくこと。これが、後悔のない、堅実なM&Aを実現するための、重要な備えとなります。

当事務所ではM&Aに関するセカンドオピニオン支援を積極的に行っています。
ご興味のある方はお声がけください。