事業承継ブログ

【事業承継の基本】10.事業承継を計画する
2025.09.21

事業承継を具体的に前に進めるためには
・実施項目
・日程
・担当
を明確にした事業承継計画を策定することが必要
になります。
これを開始するのは現経営者が行うことになりますが、事業承継計画では後継者探し、株式の移転、贈与相続への対策、後継者の育成、許認可の移行、それに伴う資金の確保などがあります。専門的な知見が必要な内容が多く、専門家に参加依頼し進めることを検討しましょう
以下にその進め方を記載します。

1.事業及び承継に関する現状をまとめる

事業の概要・ビジネスモデルや収益・財務の状況、主な市場、顧客や仕入先、借入金の状況などをまとめます客観的・定量的な情報で把握することで後継者や周囲の状況理解も得られやすくなります。経済産業省の作成したローカルベンチマーク(※)を使用するなど、数値化した状況もみられる形で把握しましょう。中小企業経営者の事業承継では相続や贈与も併せて考える必要があります。現経営者の資産や親族間の関係、推定相続人は誰になるのか、各推定相続人法定相続や遺留分の割合なども併せて把握します。

2. 自社を分析して、見える化する

当社の強み・弱みや事業を行う上での機会・脅威などを整理します。後継者が決まっている場合は現経営者と後継者が共同で進めて意思疎通を行うことが事業承継の第一歩となります。
1.2で得た情報を基に、「見える化」をおこないます。この資料が事業承継での引継ぎ資料になります。またM&A売却においては自社の魅力を買い手に認知してもらう材料となります。
自社の強みや弱みは社内では気が付かないケースも多々あります。またわかりやすくまとめることが難しいことも多いです。外部の専門家の参画も検討します。

3. 具体的な課題の整理

自社の分析を基に、対応が必要な課題を抽出します。優先順位をつけて事業承継を進めるに当たって対応必要な項目を抽出します。

4.対応必要な項目の解決策を策定

経営課題を整理した後、承継に必要な具体的な課題を掘り下げていきます。自社に必要な内容のみを実施します。以下のような例があります。

①組織変更

事業承継に際して法人化など組織変更を使うことは多くあり、これを計画します。外部に法人を設立して金融機関から借り入れを受け、そのうえで現在の会社の株式を買収する方法であるマネージメント・バイ・アウト(MBO)やエンプロイ・バイ・アウト(EBO)は多く使われるようになってきました。事業承継を機に組織的な運用を行うため、個人事業主から法人化を行う例もあります。ご子息2人に事業承継する際に事業毎に分社化して、それぞれが自分の事業に責任と権限を持たせられるようにするなどもあります。

②株式移転計画

親族間承継や従業員承継などの場合「利害関係者の間では、税務上は時価で取引すべき」とされています。親族間承継ではこれを贈与・相続を使って移転することを計画することが一般的です。必要により暦年贈与・相続時精算課税のほか事業承継税制などを選択肢に入れて計画します。従業員承継では贈与・相続による移転では親族の権利や心情を考えると使いにくく、売買での移転計画が一般的です。純然たる第三者であれば売買(M&A)を計画します。

③事業用資産・相続方針

中小企業では経営者などの個人資産を事業用に使用しているケースが多くあります。この移転を計画する必要があります。また事業承継においては親族が応援できる環境づくりは重要になります。相続・贈与に関して株式や事業用資産は後継者に集中し、それ以外の法定相続人には事業用以外の資産が受けられるように配慮することが必要です。最低でも遺留分を手当てすることは条件になります。これらを親族に伝えて後継者を応援する状況にできるように、家族会議開催や遺言書作成も計画します。

④後継者のキャリア・知識育成

業務経験の提供や研修を通じて、後継者に必要なスキルと知識を習得させることを計画します。業務経験では事業のコアになる部分のほか、経営全般を見られるよう未経験の分野でのキャリアを積んだうえで、経営者の片腕として経営者自身からその知見を体験し学ぶことをお勧めします。また経営者としての知識育成では経営管理や生産管理、販売管理、会計、人事、コミュニケーション、IT、WEBなどは実務では基礎知識を得られない場合も多く、外部講習などを計画します。

⑤M&A方針・方法

M&Aを検討する場合に実施します。法人譲渡や事業譲渡など方法や条件(相手先の条件、希望価格、従業員の雇用継続、債務保証の解除、売却後の関与等)を計画します。また相手先探しの方法を計画します。

⑥M&Aバリュエーション

純然たる第三者への売買となるM&Aの価格は最終的には相対調整ですが、一般的にはDCF法(割引キャッシュフロー法)や年買法、EBITDA倍率法などの手法で目安を算定しながら、⑤で検討した希望価格も踏まえ、実際に交渉する価格を計画します。

⑦リタイヤ後の計画

アフターリタイヤメントの計画を策定します。「後継者や会社への記録」「資産の適切な管理と投資戦略の構築と退職生活の予算と支出計画」「定期的な健康チェックと運動習慣の確立」「趣味や新しい挑戦の追求」などがあります。

4. 年次計画の策定と最終計画の作成

すべての情報と結論をもとに、実施項目・日程・担当を明確にして具体的なタイムスケジュールを策定します。親族内・従業員承継・M&Aなどの方法を決めていなかった場合は候補方法を検討・比較します。どの選択肢が最も適しているかを明確にしてタイムスケジュールを策定します。

具体的な事業承継計画を立てることで、事業承継は動きだします。進め方が分からない場合は専門家に相談しましょう