今年も神奈川県事業承継補助金の募集が始まりました。昨年度と大きな制度差異は無いようです。この補助金は物価高騰や人手不足などの影響で事業継続に課題を抱える県内中小企業の事業承継を後押しし、経営資源や雇用の喪失を防ぐことを目的とした制度です。親族内承継のほか第三者承継にも対応しており、承継の準備や実行時に必要となる費用の一部が補助されます。
本補助金の大きな特徴のひとつは、第三者承継における買い手側で、譲渡者の従業員を引き続き県内で雇用する取組が補助対象になることです。一般に事業承継の補助制度は専門家費用が中心になりがちですが、神奈川県の制度では、買い手が雇用を引き継ぐ場面そのものに着目した支援メニューが設けられています。買い手支援Aでは、譲渡者において常時使用していた従業員を県内で継続雇用する取組について、人件費(基本給に限る)が対象となり、補助率は原則2分の1以内、小規模事業者は3分の2以内、補助上限額は100万円です。
また、第三者承継に関するFA・仲介費用等について、交付決定前に仲介会社やFAと契約していた場合でも、一定の条件を満たせば補助対象になり得る点も実務上大きな特徴です。公募要領では、FA・仲介業務に係る委託契約に基づく成功報酬や中間報酬について、交付決定前に委託契約を締結していても、補助事業期間中に特定の相手方との交渉を開始し、交付決定後に基本合意・最終契約を締結し、その後に支払ったものは補助対象となる旨が示されています。M&Aの現場では初期段階で仲介会社と契約しているケースも多いため、この取扱いは活用しやすいポイントといえます。
さらに、親族内承継において株価算定が補助対象とされている点も見逃せません。親族承継枠では、親族への事業承継を目的として専門家等と連携して行う株価算定に係る取組が対象とされ、補助率は原則2分の1以内、小規模事業者は3分の2以内、補助上限額は20万円です。親族内承継では、株式の評価や承継価格の整理が実務上の重要論点になるため、この費用を支援対象にしている点は大きな特色です。
このほか、第三者承継では、買い手側のデューデリジェンス費用等や、売り手側の企業価値算定費用等も補助対象とされています。いずれも専門家等と連携する取組が前提で、補助率は原則2分の1以内、小規模事業者は3分の2以内、補助上限額は100万円です。承継前の調査、評価、契約準備まで幅広く支援対象が用意されているため、親族内承継・第三者承継のいずれでも活用を検討しやすい制度です。
なお、募集期間は2026年4月1日から2027年1月29日までで、予算がなくなり次第終了します。補助事業の実施期間は交付決定日から2027年3月15日までですので、利用を検討する場合は早めの準備が重要です。