事業承継ブログ

【事業承継は目的ではなく手段】投資対象手段としてのM&A
2025.11.30

M&Aというと「後継者がいないために会社を引き継ぐ手段」というイメージを持たれがちですが、現在のM&A市場ではその捉え方は大きく変化しています。事業承継は“目的”ではなく、企業がより強く成長していくための“手段”であり、資本戦略・経営戦略として活用される場面が増えています。この流れを理解するうえで参考になるのが、M&Aでのプレイヤーとなっているバイアウトファンドです。

従来は、M&A後に買収企業が事業を引き継ぎ長期的に運営していくことが前提でした。しかしバイアウトファンドの場合は「企業を投資対象として捉え、一定期間のうちに企業価値を最大化し、再度売却(エグジット)する」ことを目的として関与します。つまり、事業承継の課題を解決しながら、同時に“企業価値向上による投資回収”という視点が強く働きます。この点が、一般的なM&Aと大きく異なります。

ファンドが企業価値向上を図るうえで重視するのが、「EBITDA × マルチプル」による企業価値の最大化です。売上アップやコスト削減だけではなく、収益性や再現性の高い仕組みづくりこそが評価されます。そのためファンドは、事業承継のための引継ぎだけでなく、以下のような経営改善を積極的に支援します。
•採算と付加価値の向上
•不採算・低収益事業の見直し
•DX・人材育成・生産性向上施策
•PMI(買収後の統合)による組織と管理体制の強化
•ブランド戦略・販路戦略の再設計
これらは「会社を残すため」ではなく、「企業価値を高めるため」に行われるという点が特徴です。

さらにバイアウトファンドのM&Aでは、レバレッジド・バイアウト(LBO)が活用されることも重要です。「会社はそのものが毎年収益を生み出す投資」という特性を活かし、買収資金の一部に金融機関からの借入を用い、収益と金利の差異により資本効率を高めることで、経営者の株式売却による資金回収と企業成長の両立が可能になります。収益が出ていることは条件になりますが、創業者利益の確保・事業リスクの分散・次の成長フェーズへの投資が同時に成立する点が、LBOの大きな魅力です。

このようにM&Aは「会社を誰に継がせるか」という議論から、「企業の未来をどうつくるか」という経営戦略へと変化しています。

企業は経営フェーズに応じて、最適なM&Aの形を選択する時代になりました。
・後継者不在/廃業回避:事業承継型M&A
・水平展開/シナジー創出:事業拡大型M&A
・赤字/財務悪化:リストラクチャリング型M&A
・高成長/資本戦略:バイアウトファンド活用型M&A

つまり、M&Aは“出口”ではなく、成長の“入口”にもなり得ます。
重要なのは「売る」「買う」という二択ではなく、M&Aをどのように活用すれば自社の未来にとって最大のメリットになるかを考えることになります。
社会・産業構造が大きく変化する中で、中小企業が単独の努力だけで成長を続けることはますます困難になっています。事業承継、成長戦略、投資戦略。これらを柔軟に組み合わせ、M&Aを経営戦略の一部として活用できるかどうかが、これからの企業の未来を大きく左右します。