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事業承継・M&A補助金 第12次公募 「廃業・再チャレンジ枠」の紹介
2025.08.24

中小企業にとって、事業の継続や承継は避けて通れない大きな課題です。後継者不在や経営環境の変化により、廃業を選択せざるを得ない企業も少なくありません。しかし近年は小さな事業であっても「単なる廃業」ではなく、 M&Aなどによる事業の譲渡への選択肢を得られる可能性は高まっています。それでも最終的に譲渡が成立せず廃業に至る場合、その挑戦を無駄にせず、次なる一歩につなげるために設けられた制度が「廃業・再チャレンジ枠」です。

本コラムでは、2025年度に公募される「事業承継・M&A補助金 第12次公募」のうち「廃業・再チャレンジ枠」について解説します。

制度の趣旨 ― 廃業を次につなげるために

この補助金は、中小企業者や個人事業主が 事業承継や事業再編を契機に、新しい取り組みへ挑戦するための経費を支援する制度です。
特に「廃業・再チャレンジ枠」では、次のような考え方が重視されています。

まずM&Aによる事業譲渡に挑戦すること

廃業前に、事業承継・引継ぎ支援センターへの相談、M&A仲介業者との契約、マッチングサイトへの登録などを通じて「譲渡に着手した」実績が求められます。つまり、補助対象は「いきなり廃業」ではなく、事業を次世代へつなぐ努力をした企業です。

廃業はゴールではなく、新たなスタート

譲渡が叶わなかった場合でも、その経験を土台に新たな事業や社会的な活動へ再挑戦することが制度の目的。例えば、法人を新設して新事業を始める、個人事業主として新しい分野に挑む、あるいは知識や経験を活かして企業に再就職することも対象になります。
このように「廃業・再チャレンジ枠」は、単なる廃業支援ではなく、M&Aへの挑戦と新しいチャレンジを促す前向きな支援策といえます。

補助対象者と要件

対象となるのは、中小企業基本法に定める中小企業者および個人事業主で、以下の要件を満たす必要があります。
・日本国内に拠点を置き、地域経済に貢献していること
・M&Aによる事業の譲渡に「着手」したが、成約に至らなかったこと
・廃業後の再チャレンジ計画を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けていること
・法人の場合は「廃業する会社」と「支配株主または株主代表」の共同申請が必須となり、個人事業主は単独で申請します。

補助内容

・補助率:補助対象経費の3分の2以内
・補助上限額:150万円(下限50万円)

対象経費:

・廃業支援費(司法書士・税理士等への専門家費用、人件費)
・在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リース解約費
・※廃業支援費は50万円が上限
重要なのは、補助対象経費は廃業に伴う費用のみという点です。ただし、廃業そのものが最終目的ではなく、「新たなチャレンジのための廃業」であることが前提条件です。

申請スケジュール

・申請受付期間:2025年8月22日(金)~9月19日(金)17:00(厳守)
・事業実施期間:2025年10月下旬から12か月以内
申請はすべて 電子申請(jGrants) で行います。gBizIDプライムアカウントの事前取得が必須で、申請書類は認定経営革新等支援機関の確認書や再チャレンジ計画書、M&A着手を示す証憑などが必要です。

審査のポイントと加点要素

審査では次の点が重視されます。
・廃業の必要性が明確か
・従業員や取引先への配慮など廃業準備が適切か
・再チャレンジ事業の実現性が高いか
さらに、次のような場合には加点されます。
・再チャレンジする主体の年齢が若い
・起業・引継ぎ型創業である
・事業場内最低賃金+30円以上の賃上げを表明している
ただし、賃上げ要件を満たせなかった場合は、その後18か月間の補助金申請において大幅減点されるため、慎重な判断が求められます。

実績報告と交付後の義務

廃業完了後には、法人なら「閉鎖事項全部証明書」、個人なら「廃業届」を提出する必要があります。また補助金交付後は、1年間の事業化状況報告と帳簿の5年間保存が義務付けられています。

まとめ ― 前向きな「廃業」と「再挑戦」へ

「廃業・再チャレンジ枠」は、単なる廃業費用の補填制度ではありません。
まずM&Aで譲渡に挑戦したこと
そのうえで廃業し、新たなチャレンジを行うこと
これらを前提として支援する仕組みです。
経営者にとって廃業は苦渋の決断かもしれません。しかし、廃業をもって経営者人生が終わるわけではありません。これまで培った経験や知識を活かし、次の挑戦に踏み出す契機とすることができます
本補助金をうまく活用することで、廃業を「終わり」ではなく「新しいスタート」として位置付けることが可能になります。